バーディネー社のディロン蒸留所があるのは、カリブ海に浮かぶマルティニーク島です。 カリブ海といえば、名だたるラムの産地。なかでもディロンラムは300年にも及ぶ歴史を持つカリブの逸品として、世界中で愛されています。 300年前に遡るディロン家の物語。 マルティニーク島に住む美しい未亡人マリー・ロール伯爵夫人。 彼女は広大なプランテーションと精糖工場を持つ一族の出身です。 この伯爵夫人と恋に落ちたのが、アメリカ独立戦争に赴くためにフランスからマルティニーク島に向ったディロン連隊の隊長、アルテュール・ディロン伯爵でした。 将軍となった彼はマリー・ロールと結婚し、このときから伯爵夫人のプランテーションはディロンと呼ばれるようになりました。 しかし、結婚した2人には厳しい運命が待ち受けていました。 フランス革命に巻き込まれたディロン将軍は、「王よ、永遠に」と叫びながらギロチンの露となってしまったのです。 マルティニーク島でプランテーションを管理していたディロン伯爵夫人は、子供たちとともにイングランドへ逃れ、時勢が落ち着いたところでフランスに渡り、夫人の若い頃の恋敵であった従姉妹のジョゼフィーヌと再会します。 このとき、ジョゼフィーヌはナポレオンと婚約していました。 ナポレオンはディロン伯爵夫人の娘であるファニー・ディロンに淡い思いを寄せていたと思われますが、結局ファニーはナポレオンの片腕ベルトラン将軍と結婚します。 ベルトラン将軍は後にナポレオンの遺骨をセントヘレナ島から持ち帰った人物です。 このあと、マルティニーク島のディロン・プランテーションは破産してしまうのですが、伝統は見事に継承され、さまざまな変遷を経て、1967年、フランスのボルドーで数百年の歴史を持つバーディネー社によって高貴な歴史を語るディロン蒸留所は甦ることになります。