1855年創業の食料品商オースティン・ニコルズが、北カロライナ州の七面鳥狩りに集まる人の為、特別ブレンドのバーボンを作り名付けたことから生まれたワイルドターキー。このバーボンが、全米的な人気酒になったのは第2次大戦後。アイゼンハワー大統領が愛飲していることが報じられたためです。1971年まで、ニコルズ社は蒸留所を持たず、購入原酒をブレンドする業者でした。同年、ケンタッキー州ローレンスバーグの古い蒸留所を買収。以後、自社で蒸留から熟成まで一貫して行っています。
ワイルドターキーは、バーボン法の規定よりもさらに厳しいアルコール度数で蒸留、樽詰めを行っています。これはワイルドターキー蒸留所で最も大切なこだわりだと言えます。バーボン法が規定する蒸留時のアルコール度数は80%以下。これに対してワイルドターキーは60〜65%にて蒸留。また同法が規定する樽詰め時のアルコール度数は62.5%以下。これに対してワイルドターキーは54〜55%にて樽詰めを行っています。この低いアルコール度数にこだわるのは、フレーバーとボディをより豊かに形成するため。なぜなら蒸留時にあまりアルコール度数が高いと、原材料の持つフレーバーが失われてしまうからです。低いアルコール度数で蒸留することで、原料の風味をニュー・ウイスキーの中に封じ込め、また熟成後のボトリング時にも、原酒の風味を損なわないよう加水量を最低限に抑えることへと繋がっていきます。 樽詰め時と製品とのアルコール度数の差が少ないと、ボトリング時の加水量を最低限に抑えることが可能となります。ワイルドターキーでは、蒸留、樽詰め時のアルコール度数を低く抑えていることから、加水量が少なく、熟成時に形成される繊細で豊かな風味を鮮烈に残すことができるのです。 例えば、高いアルコール度数で蒸留、樽詰めを行い、熟成期間も最小限に抑えてボトリング時の加水量を多くすれば、1樽からより多くの製品を造ることが出来、また製造コストも割安となるでしょう。しかし原酒の持つ旨さにこだわるワイルドターキー蒸留所では、その様なことは決して行いません。ワイルドターキー蒸留所ではその独自のポリシーにより、1樽から製造できる製品の数は約15ケース程度。他の一般的な蒸留所では約20ケース程度が製造されています。蒸留、樽詰め時のアルコール度数を低く抑えることは、製造に掛かるコストは割高になりますが、味と風味を保つためには決して妥協できないワイルドターキー蒸留所の「こだわり」なのです。 ワイルドターキー蒸留所責任者。バーボン造りに捧げた日々は、すでに半世紀以上。妥協を許さないモノ造りへの真摯な姿勢、伝統製法がもたらす深遠な味わいは、本物を愛する世界中のウイスキー愛飲家を魅了している。