マッカラン蒸溜所 エルギンから南へ約20キロ。941号線はクレイゲラヒー村でスペイ川を渡ります。英国一の急流スペイ川も、このあたりでは蛇行して浅瀬をつくり、川面には鱒などが跳ねて、美しい景観。岸辺の鉄道跡地が緑の遊歩道となり、散策する人、釣糸を垂れる人の姿もちらほら。そんな村の対岸の木立につつまれて、ザ・マッカラン蒸溜所はあります。 その歴史 ザ・マッカラン蒸溜所は、ハイランドで2番目の政府登録蒸溜所として1824年、正式に発足しました。しかし、蒸溜の歴史ははるかに古く、このあたりがまだマッカラン教区と言われていた18世紀初めには、すでに名が知られていました。クレイゲラヒーの浅瀬を渡り、都会に牛を売りに行く牧童たちによって、マッカラン農場の<いのちの水>は広められ評判となっていったのです。 NO.1秘密:その製法 信頼の、あるいは敬慕の、そして時には心酔の響きとともに口をついて出てくる蒸溜所の名前─それが、ザ・マッカランです。ほとんどの利き酒コンテストでNo.1となり、ハロッズの「ウイスキー読本」では「シングルモルトのロールスロイス」とまで讃えられている現代シングルモルトの最高峰です。その名酒を生み出す秘密は、原料大麦の品種、ポットスチルの型と大きさ、そして貯蔵樽の種類の3点で、並はずれた贅沢を守り抜いていることにあります。ザ・マッカランでは、麦芽用の大麦に、最高のモルトウイスキー用品種とされるゴールデンプロミス種を使っています。これを、スペイ川沿いの良質な伏流水で仕込み、醸しています。発酵の終ったウォッシュを待ち受けているのは、小振りの直火蒸溜釜です。スペイサイドでも最も小さな釜でじっくりと蒸溜し、厚みのある芳香成分をとりだしています。初溜釜1基にそれより小さな再溜釜2基をあてるユニークな構成で、ポットスチルは第1蒸溜室に初溜5基、再溜10基、第2蒸溜室に初溜2基、再溜4基、計21基です。14基の再溜釜で生まれた各ウイスキーは、すべて巨大なタンクに導かれ、いわばこの段階でヴァッティングされています。 シェリー酒のしみた樽:その熟成 そして最後にして最大の特徴は、オール・シェリー樽貯蔵。いまではスペイン産のシェリー樽は高価となったため、ほとんどの蒸溜所は主にバーボンの空き樽を使っていますが、ザ・マッカランだけは、すべてシェリー樽貯蔵。それもスペインでシェリー用の新樽を自ら買付け、現地で1年間シェリーの発酵に使った後に、さらに2年間オロロソ・シェリーの貯蔵に使ってもらいます。こうして出来た熟成後の空き樽をスペイサイドに移送し、入念にチェックします。赤味の強い琥珀色や甘美でデリシャスな芳香は、このシェリーがたっぷり染みた贅沢な樽からの贈り物。そして、シングルモルトのためには、貯蔵庫から最高の熟成樽が選ばれ、ヴァッティング後、大樽で半年間のマリイング(後熟)。こうした贅沢があって最高の品質は結晶し、世界中のウイスキー通の心を魅了しているのです。 創業年:1824年 仕込み水:蒸留所下の5つの井戸水 ポットスチル:ストレートヘッド型 初留釜x7基 再留釜x14基 熟成にはドライ・オロロソのシェリー樽を使用。 ゲール語:聖コロンバの丘